飼育員ブログブログ
2025年9月17日(水)類人猿舎の歴史6~誕生~
類人猿舎では、大型類人猿3種の繁殖に成功しています。
最初に繁殖したのが、すでに性成熟を迎えていたゴリラでした。
移動当初は、環境の変化に戸惑い、食欲不振だったり、オスがメスに八つ当たりするなどの行動が見られていましたが、1か月半後の1970年1月22日に初めての交尾が観察されました。当時の飼育日誌には、イラストを交えた詳細な報告が残されています。
2月27日にも交尾が確認され、それ以降は交尾が観察されていません。ちなみに、交尾を観察したのはいずれも飼育の副担当の時で、見せつけるように交尾していたと記録されていました。
そして、最終交尾から245日が経過した10月29日に日本で初めて、ゴリラの子(オス、マックと命名)が誕生しました。
出産は午後2時30分頃にグラウンドで行われており、来園者によって連絡を受けています。飼育員によって室内に誘導された母親のべべは、まだ臍帯と胎盤がつながったままの子供を正しく抱くことができず、このままでは母親による圧死や体温低下による衰弱の危険性があると判断され、人工哺育することが決断されました。1971年1月13日撮影
当時の様子は、昭和31年(1956)から平成6年(1994)まで京都市広報課が製作・上映していた市政ニュース映画の昭和46年1月上映分で紹介されています。
この時、得られたゴリラの繁殖・人工哺育・成長に関する成果は、日本動物園水族館雑誌に投稿されています。
・動水誌XⅢ,2(1971) ゴリラ,Gorilla g.gorilla,の繁殖と人工哺育 第1報 生後4ヵ月まで
・動水誌XⅣ,2(1972) ゴリラ,Gorilla g.gorilla,の繁殖と人工哺育 第2報 生後5ヵ月から2才まで
また、国内で初繁殖であったことから、日本動物園水族館協会から、繁殖賞を受賞しています。
その後、これらの業績が認められ、表彰もしていただいています。
先達から学び、新たな知見を取り入れ、現在の飼育繁殖へとつなげています。
園長 和田