生き物・学び・研究センターブログ

2025年4月10日(木)(チンパンジーのお勉強)間違えても間違えてもやめないロジャー

「チンパンジーのお勉強」では、チンパンジーたちは、問題に正解してごほうびの食べ物を手に入れるのを楽しみに参加してくれていると考えています。

しかし、子どもは必ずしもそうではないのかもしれないと思えるエピソードを今回は紹介します。

2025年3月31日のお勉強の時間の終わり頃、ロジャーは、自分用の1から9までの数字の順番を覚える問題が出るモニターが空いているのに、大人用にセットされた1から16までの数字が提示される問題をし続けました。

問題が出るモニターが3台とも空いている部屋に入ってきたロジャー
ロジャー(左)の向かっている画面には、1から16までの数字が出てきている。

偶然に正解できるには、ロジャーが知らない数字が多すぎて、何回やっても間違ってばかりです。それでもロジャーはあきらめずに、とうとう25問も連続して間違い続けました。

その間、ごほうびはひとつももらっていません。最後にロジャーは場所を移り、自分用の1から9までの問題に正解して、ごほうびの食べ物を手に入れました。

右のモニターには、1から9までの問題が出る。ロジャーが勉強しているのはこのレベル。

ロジャーの無謀とも思える挑戦には何の意味があったのでしょうか? 「チンパンジーのお勉強」には、高い知性を備えているチンパンジーに、その能力を使う機会を提供するという、「認知的エンリッチメント」の意義もあると考えています。

一度、右のモニター(1から9までの問題)に移った後、左のモニター(1から16までの問題が出る)に戻ったロジャー。

静止画だけでは伝えきれないので、動画でご覧いただきたいと思います。

動画は、YouTubeの【公式】京都市動物園チャンネルをご覧ください。

(チンパンジーのお勉強)間違えても間違えてもやめないロジャー

ロジャーにとっては、大人がやっている難しい問題をやってみることそれ自体に何らかの快感を感じたのかもしれません。 これは子どもの時期だけに見られることのようで、大人では自分の問題よりも簡単な方に移ることはあっても、難しい方の問題に挑戦して間違い続けるといったことは、見られていません。

ロジャーは、この以前にも、大人のやっていた問題に挑戦することがありました。

例えば、
(チンパンジーのお勉強)あえて困難に挑むロジャー (YouTube【公式】京都市動物園チャンネル)

これらの映像以外にも、公開していない観察記録もあります。いろんな解釈が可能で、決定的なことが言えませんが、これからもこのようなエピソードがあればご紹介したいと思います。

田中正之