生き物・学び・研究センターブログ

2025年6月27日(金)標本棚のラベル裏013 ホンシュウジカ(頭骨+環椎)

京都市動物園は1903年の開園以来、様々な動物を飼育してきました。
動物が死亡した後は、教育普及・研究を目的として、標本を作製し保存しています。
このブログでは、現存する所蔵標本を、ラベルに載せ切れない情報と共にご紹介したいと思います。

日本で野生動物の目撃例や被害について語られるとき、必ず登場するニホンシカ。
下草や樹皮を食べ尽くすことから、特に林業や農業に関わる方の頭を悩ませる動物です。
この標本は、その亜種の一つ、ホンシュウジカの頭骨と環椎(第一頸椎)。

彼らはウシと同じく鯨偶蹄目に属し、反芻を行うことで消化能力を向上させています。
ウシと同じく上の切歯がなく、代わりに歯板と下の切歯を使って草を食べます。

頭骨を見たときに際立つのは、やはりその角。
枝角(アントラー)と呼ばれ、最初は軟骨とそれを覆う皮膚組織から構成されますが、やがて骨に置き換わり、表面の皮膚が剥がれ落ちます。
軟骨に皮膚が覆った状態の角は袋角と呼ばれ、また鹿茸という名称で漢方薬にもなります。
さて、この角、ホンシュウジカではオスのみが持ちますが、1年に1回脱落します。
1歳年を取るごとに角の分かれ目の数が0→1→2→3と増えるため、その外観から1歳→2歳→3歳→4歳以上と、年齢を推定することができます。
この標本は3回枝分かれしているため、満4歳以上のオスであることが分かりますね。
基本的に4歳以上になってもそれ以上枝分かれは増えないのですが、4回枝分かれした角の個体が確認されることもあります。

この個体の由来は不明ですが、2008年に標本として受け入れた記録が残っています。


土佐