生き物・学び・研究センターブログ

2025年8月16日(土)標本棚のラベル裏019 エミュー(皮革標本)

京都市動物園は1903年の開園以来、様々な動物を飼育してきました。
動物が死亡した後は、教育普及・研究を目的として、標本を作製し保存しています。
このブログでは、現存する所蔵標本を、ラベルに載せ切れない情報と共にご紹介したいと思います。

エミューは、ダチョウに次いで大きな鳥で、オーストラリアの乾燥した地域に生息しています。
羽毛は体全体を覆っており、雌の方が僅かに羽根の色が濃いようです。

鳥の1本1本の羽根の構造は、通常、1本の羽軸の両側に羽枝と呼ばれる小さな枝が生えています。
この羽枝には更に小羽枝と呼ばれる極小の枝が生えており、これが互いに絡み合って羽弁を形成し、羽ばたく際の揚力を生み出しています。
ところが、エミューは飛翔能力を必要としないためこの小羽枝を持たず、写真のように風通しの良い羽根となっています。
また、上の写真の羽根では1本ですが、本来は1本の付け根から同じ長さの2本の羽軸が伸びています。
エミューにだけ見られる珍しい羽根の形、2本並んでいる様子、ハート形にすることができることなどから、エミューの羽根を、恋のお守りとして販売している動物園もあるようです。

残念ながら、この標本がどの個体のものであるかは特定できませんでした。
当園の記念誌をさかのぼりますと、少なくとも1947年にはエミューの飼育を開始したようです。
情報が残っている中で最も長命な個体は0001F。
1959年生まれで1993年に死亡しており、エミューの寿命といわれる30年を超えて、34歳まで生きたことになります。

土佐