生き物・学び・研究センターブログ

2025年11月15日(土)標本棚のラベル裏032 インドオオコウモリ(頭骨)


動物が死亡した後は、教育普及・研究を目的として、標本を作製し保存しています。
このブログでは、現存する所蔵標本を、ラベルに載せ切れない情報と共にご紹介したいと思います。

頭骨に限らず、標本のラベリングはとても大切。
外観のみから生年月日や飼育情報を完全に引き出すことはできませんし、余り特殊化していない種では、そもそも種を特定することすらおぼつかなくなるからです。
今回ご紹介するこの標本も、外見で見分けることはできませんでした。

眼窩が大きいことから視覚が発達した動物でしょう。
平らな臼歯を持っていることから植物食あるいは雑食であることが分かります。
犬歯から鼻先側の上顎骨が欠けているように見えるのは、この種の特徴…?

前方から見ると下顎の歯槽(歯の入る骨のくぼみ)が左右2つあることから、門歯は2本ずつあったことが分かります。
ところが上顎には歯槽が見つかりません。
例えばウシの仲間では上顎門歯がないことが知られていますが、一般的な哺乳類では上顎下顎、どちらにも同数又は似た数の門歯があることが一般的。
このことから、この標本の上の門歯は、前上顎骨ごと脱落したのではないかと推定しました。
この脱落は破損によるものの可能性もあるのですが、断端は左右対称で無理な力がかかった様子はありません。

オオコウモリの前上顎骨は上顎骨と癒合しておらず、靭帯で連結されているという資料を確認しました。
この標本の前上顎骨も、標本にする過程で靭帯が失われ脱落したのかもしれません。
後眼窩突起が発達しているという特徴も見られます。
以上から、同封されていたラベルのとおり、インドオオコウモリの頭骨であると判断しました。

現在も当園で飼育しているインドオオコウモリですが、国内では飼育頭数が減り続けています。
将来的に、日本の動物園で見ることができなくなる種の一つではないかと思われます。

土佐