生き物・学び・研究センターブログ

2026年7月25日(土)標本棚のラベル裏053 ライオン(メス17~18歳、足標本)

動物が死亡した後は、教育普及・研究を目的として、標本を作製し保存しています。
このブログでは、現存する所蔵標本を、ラベルに載せ切れない情報と共にご紹介したいと思います。

前回に引き続き「成形皮」のご紹介。
ライオンの手足の標本です。
大きさは大きく異なりますが、肉球の形状、指行性であること、爪を出し入れすることができることなど、ネコの仲間に共通の特徴を備えています。

残念ながら、肉球、特に掌球の表皮の脱落と、一部真皮の欠損が生じています。

肉球では、皮膚を構成する表皮、真皮、皮下組織のうち、表皮が分厚くなっています。
以前「獣医室だより」で、肉球は治癒が悪い場合があると書かせていただきました。
皮革の標本を作る際にも、肉球部分は処理に気を使います。
ほかの部位と比べると分厚いうえに可動性が少なく、取り外すのに時間がかかるからです。

通常の皮なめし標本を作る際は、手袋を開くように剥皮を行い、洗浄工程に移ります。
一方、剥製などで元の形状を再現したい場合は、肉球間の皮膚を切開して剥皮します。
ところがこの標本では、どちらの方法も使用していません。
手首以遠を切開せずに、手袋を脱ぐように裏返して剥皮処理することで、元の形状を極力維持しているのです。

この標本の由来は、1981年生まれで、1982年に受け入れ、1999年に死亡するまで16年超飼育したメスのマリー。
当園では、本標本を、指先で歩く指行性動物代表として活用しています。
前回ご紹介した蹠行性のニホンツキノワグマ、蹄行性のアミメキリンと合わせて、歩き方の違いを説明するために使用しています。
なお、種の保存法の制限により、ライオンの標本は貸出不可となっておりますので、ご承知おきください。

土佐

参考資料;

  • 大阪市立自然史博物館(2007):5章 脊椎動物の標本作り.In標本の作り方 自然を記録に残そう:91-133.大阪市立自然史博物館編,東海大学出版会,神奈川県.
  • 環境省(2026):種の保存法における規制対象種一覧(令和8年3月5日時点),https://www.env.go.jp/content/000046164.xlsx,[Verified 17, July 2026]
  • 橋本太郎(1977):獣類の剥製.In坂本式剥製法:121-184.橋本太郎,北隆館,東京都.
  • 山内昭二,杉村 誠,西田隆雄(1998):第10章 外皮.In獣医解剖学〈第2版〉:313-329.山内昭二,杉村 誠,西田隆雄 監訳,近代出版,東京都.