生き物・学び・研究センターブログ

2026年11月2日(月)標本棚のラベル裏059 トラ(オス15歳、頭骨標本)

動物が死亡した後は、教育普及・研究を目的として、標本を作製し保存しています。
このブログでは、現存する所蔵標本を、ラベルに載せ切れない情報と共にご紹介したいと思います。

地域により体格差が大きいトラ。
寒い地方の亜種ほど体が大きくなるという点で、ベルクマンの法則の典型例でもあります。
北方に住むアムールトラは体重が300kgを超えることもあり、ネコ科最大級の種といえるでしょう。

巨大な犬歯、尖った臼歯など、肉食動物の典型ともいえる形状をしています。

ネコ科の頭蓋骨を比較したところ、トラは、ライオン、ヒョウ、ジャガーと比べて、頭蓋骨の最大長に対する脳容積が大きいとされます。
ただ、これについては行動や知られている生態の差とは相関がなく、進化的な系統の差(トラは他3種より早く共通祖先から分岐している)を反映しているに過ぎないようです。

トラの骨は伝統的に漢方薬の原材料として使用されていきました。
近年の個体数の減少などから、ワシントン条約付属書Ⅰに記載されており、商業目的での取引は原則として禁止されています。
その代替として、付属書Ⅱに記載されているライオンの頭骨が使用されるようになってきているのですが、ライオンの頭骨と偽ってトラの頭骨を輸出入する事例も見られるのだとか。

トラの頭骨とライオンの頭骨は、いくつかの点で見分けることができます。
比重や縫合線(骨と骨が癒合している部分)後端部の前後関係などが見分けるポイントであるとされるのですが、外見上分かりやすいのは、地面に置いたときの安定性かもしれません。
トラの頭骨は、1枚目の写真のように2つの点(臼歯の生え始めの真下辺りとエラの部分)で地面に接しているため、地面に置くと安定します。
一方ライオンの頭骨は、臼歯が生えている領域直下の1点でのみ地面に接し、設置面に向かって凸であるため、前後に揺れる傾向にあるのです。
もちろん種差や個体差もあるのですが、似通っている骨でも、比較すると違いがあるのですね。

この個体は、2010年に生まれた三つ子のトラの次男、ルイ。
宇都宮動物園で飼育され、15歳で死亡しました。
上顎右上部の白化部は、晩年患った口腔疾患の影響ではないかと思われます。

土佐

参考資料;

  • Różycka, K., Skibniewska, E., Rajkowski, Ł., & Skibniewski, M. (2024). Craniometric Characteristics of Selected Carnivora Species Kept in Captivity in Relation to Bite Force and Bending Strength of the Upper Canines. Animals : an open access journal from MDPI, 14(9), 1367. https://doi.org/10.3390/ani14091367
  • Williams, V. L., Loveridge, A. J., Newton, D. J., & Macdonald, D. W. (2015). ‘Skullduggery’: Lions Align and Their Mandibles Rock!. PloS one, 10(11), e0135144. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0135144