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2026年2月12日(木)【論文】この白湯飲んでくだサル?-Amazonほしい物リストを活用した環境エンリッチメントの実践-【研究報告】

当園で実施する飼育環境の改善の試みが、
新たな論文として出版されましたので、報告させていただきます。

以前、キリンの研究で【キリンはお熱いのがお好き?】としてご紹介させてもらいましたが、

当園では、キリンの寒さ対策にお湯を与えてみる飼育研究を行っていました。
今回は動物種を変えて、新たに調査を行いました。

今回着目したのは、タイトルの通り、こちらの動物です。

はい、アカゲザルです。
当園で飼育するアカゲザルは現在10頭(観察当時は11頭)で、
みな、アカゲザルの中高年の年代(18歳以上)になります。

これまで世界中で行われてきたアカゲザルの研究では、
そもそも気温の低下や、加齢により飲水量が減少することがわかっています。
飲水量の減少は、(特にヒトの高齢者では、)
疾病率の増加など健康上の懸念も生じる可能性もあります。
そこで、飲水量の改善を目的に、お湯を与えてみました、という内容です。

さて、皆さんなら【冬にアカゲザルはお湯を与えると、水よりもよく飲む!】ということを
どうやって証明しますか?

お湯と水を並べて、どっちを先に飲むか、調べる?
それとも、水の時とお湯の時とで、飲んだ量を比べる?
はたまた、どっちが好きか、アカゲザルに聞いてみる?

これ以外にもいろいろ方法は思いつくと思いますし、証明の仕方は一つではありません。
今回は、飼育作業の限られた時間の中でできる方法を考え、3つの方法で調べてみました。

(類人猿舎に設置した観察用機材:プラ船に水もしくはお湯を入れます。)

 
(水、もしくはお湯を飲みに来る様子)

①水を置いた時と、お湯を置いた時で、飲む頻度が変わるか?
毎日特定の時間に室内に餌を撒くようにし、
そこから20分間、水(もしくはお湯)を飲む回数を比較しました(8日間ずつ)。
【結果】

水を置いても、お湯を置いても、飲水回数は変わりませんでした!

②水とお湯、同時に置いたら、どっちを飲みに行く?
①の観察と同様に、餌を撒き、
水とお湯、同時に置いた状態にし、どちらを飲みに行くかを20分間、計測しました(合計16日間)。
(なおアカゲザルが、東と西のプラ船で飲む傾向が違うかもしれないので、
 途中で左右:東西を入れ替えました。)
【結果】
両方温水 :東43回 西67回
東だけ温水:東51回 西68回
西だけ温水:東17回 西70回
となりました。これを統計解析した結果が以下です↓↓

アカゲザルが、温水を入れている方に偏って飲みに行ったことがわかりました!
つまり、アカゲザルが温水を好んで飲んでいることがわかりました。

③お湯と水で、1回当たりの飲んでいる時間に差はないのか?
ここまでの結果を踏まえて、①と②で結果にやや相違があるように見えます。
そこで、追加で観察を行い、
アカゲザルが水(もしくはお湯)に近づき、離れるのを1回とカウントし、
【アカゲザルが顔を水面につけている時間】を計測し、比較することにしました(10日間)。
(観察する時間は、①②と同様です。)
【結果】

温水を飲んでいるときの飲水時間が長くなりました!

これらの結果から、冬にアカゲザルに温水を与えると、
温水を好んで飲み、飲水量が水に比べて、増える可能性がわかりました!
つまり、温水を与えることで、高齢アカゲザルの福祉が改善されることがわかりました。

また今回の飼育環境の改善にあたっては、
Amazonほしい物リストと餌の寄付を活用し、実施させていただきました!

ご支援いただいた来園者の皆様、株式会社ウィードプランニング様、
ありがとうございました!!

論文の詳細は、こちらから自由に読めます。ご興味ある方は、参照ください。
実施にあたり、ご支援くださった皆様に、改めて深く御礼を申し上げます。

Okabe, K., & Niimi, K. (2026). Investigation of warm water enrichment on drinking behavior in older
rhesus macaques. Animal Behavior and Cognition, 13(1), 67-78. https://doi.org/10.26451/abc.13.01.04.2026
飼育下(例:動物園)の高齢動物は特別なケアを必要とする場合がある。先行研究では、アカゲザルの飲水量減少は低温環境と加齢に起因し、福祉の低下につながる可能性が示唆されている。本研究は、温水を供給することが高齢アカゲザルの飲水量と嗜好性に影響を与えるかを評価することを目的とした。実験は京都市動物園において、高齢アカゲザル11頭を対象に実施された。観察は2024年11月21日から2025年4月12日までの42日間実施した。室内飼育環境に常温水と温水の容器を設置し、アカゲザルの飲水行動を20分間記録した。飲水頻度に水温による有意差は認められなかった。しかし、各飲水行動における飲水時間は、常温水提供時よりも温水提供時の方が有意に長かった。さらに、常温水と温水を同時に設置した場合、アカゲザルの飲水行動は温水容器に有意に偏った。つまり、アカゲザルは温水摂取を好む傾向を示しており、温水の設置が高齢アカゲザルの飲水環境改善に寄与する可能性が示唆された。

アカゲザル担当
オカベコウタ