生き物・学び・研究センターブログ

2025年6月14日(土)標本棚のラベル裏011 アメリカビーバー(頭骨)

京都市動物園は1903年の開園以来、様々な動物を飼育してきました。
動物が死亡した後は、教育普及・研究を目的として、標本を作製し保存しています。
このブログでは、現存する所蔵標本を、ラベルに載せ切れない情報と共にご紹介したいと思います。

ビーバーは、げっ歯類の中で、カピバラに次いで2番目に体重の重い生き物です。
ヨーロッパには同じくビーバー科のヨーロッパビーバーが生息していますが、当園で保存しているこの頭骨はアメリカビーバーのもの。
最大の特徴は、木を切り倒す強靭な切歯です。

正面から見ると、切歯の吻側のみ茶色く着していることが分かります。
切歯の前面に鉄を多く含むため、これが植物と化学反応を起こして変色しているのです。

生息地であるアメリカでは、ダムを作って豊かな生物相を作る一方、洪水や過剰な植物の切倒しを引き起こすこともある動物と認識されています。
なお、本種は半水生であり、住みかは自分の作ったダム。
陸地に巣穴を掘るわけではありません。
このため、とあるアニメに登場する「俺は原作には登場しない」が口癖のキャラクターは、ビーバーではないことが分かります(正しくはジリス)。

この頭骨の個体は0015F。
恩賜上野動物園生まれの個体で、1年半ほど飼育したのち、残念ながら肺炎で死亡しました。
若い個体で歯牙疾患などはなかったと思われ、健康な歯列を確認することができます。

土佐