生き物・学び・研究センターブログ

2025年7月22日(火)(チンパンジーのお勉強)悪さをするロジャー

チンパンジーのお勉強部屋です。

左で部屋の外を見ているのがジェームス、中央がニイニ、右のモニターに向かっているのがロジャーです。

最近、ロジャーはお勉強用タッチモニターにつないでいる、ごほうびの食物片が出てくるチューブをいじるのが癖のようになっています。時には正解してもチューブの途中で食べ物が引っかかって出てこないこともあるのですが、問題に間違えたときの方がむしろチューブをいじることが多いように思われます。

ロジャーがよく使っているのは上の写真の右側のモニターですが、最近はそこにつなげているチューブを指で押し出して、外してしまうことがあります。チューブが外れてしまっては、食べ物もとどけられないので、ロジャーにとっていいことは何もないように思いますが、自分の行動によって装置の状態が変えることが彼のモチベーションになっているようです。

ロジャーがチューブを外してしまうことが度重なるので、この日は外れたままにしておきました。ロジャーは問題に正解してもごほうびが出てこないのが不満そうでしたが、自分の行いのせいだということは理解していないようです。

ごほうびが出てこなくなると、ロジャーはモニターを頭で押して、まるで機械を壊そうとするような行動を見せました。

頭を突っ込んで、画面を押すロジャー。

また、両手のこぶしで画面を押したりもしました。

お勉強とは全然関係ない、このような行為を始めたときにどう対処するか。

実はとっても難しい問題です。叱ってやめさせようとしても、外から声を出すしかできないので、ロジャーには痛くもかゆくもありません。

むしろ、こちらが強い反応を見せたことで、余計に反応を強めてしまうこともあります。食べ物で釣って他の場所に呼んでも、食べたらすぐに戻ります。何度も続けると、悪さをすることとごほうびがつながってしまうことさえあります。

これまで長い間(30年以上!)チンパンジーと付き合ってきて、何度も失敗して、得た結論は「何もしないで見ている」でした。気持ちを表情に出さずに冷静に見ていると、やがて何も起こらないことに飽きたのか、諦めたのか、ロジャーは部屋から出て行きました。

チンパンジーの勉強部屋では、勉強以外に色んなことが起こっています。

この日の様子を動画で見られるように、YouTubeの【公式】京都市動物園チャンネルにアップしたので、こちらもご覧ください。

(チンパンジーのお勉強)悪さをする子への対処法

田中正之