生き物・学び・研究センターブログ

2025年11月1日(土)標本棚のラベル裏030 オオアリクイ(頭骨)

1903年の開園以来、様々な動物を飼育してきました。
動物が死亡した後は、教育普及・研究を目的として、標本を作製し保存しています。
このブログでは、現存する所蔵標本を、ラベルに載せ切れない情報と共にご紹介したいと思います。

京都市動物園に所蔵されている標本群には、歯槽に歯がはまっていない標本があります。
これは、骨格標本にする過程で歯を固定している組織が脱落し、歯が抜けやすくなったため。
展示用の標本とする場合は接着剤などで固定しますが、資料用に保管する場合にはそのまま別の袋に保管していることが多いです。
このため、生前の歯列を再現する際には、どこにどの歯がはまるか、パズルに奮闘することになります。

そんな心配がない標本の一つが、このオオアリクイ。
かつて分類されていた貧歯類の中でも歯の退化が著しく、全ての歯を失っています。

管のようになった口の先が小さく開いており、ここから全長60cmに及ぶ舌を出し入れして昆虫を舐めとります。

この特殊な形状の口から、餌の調整や舌の怪我などに気を使わなくてはいけない動物です。
飼育下では毎日大量の昆虫を確保し与えることが難しいため、今日の動物園に置いては、もっぱら肉やペレットなどをミキサーで液状にして与えているようです。

京都市動物園では現在はオオアリクイは飼育していませんが、これまでに7頭の飼育記録があります。
残念ながらいずれも来園後10年未満に死亡しており、繁殖にも至らなかったようです。
土佐