飼育員ブログブログ

2025年11月1日(土)ありがとう、ゲンタロウ

 10月27日、ゲンタロウの移動当日の朝。

とても緊張していた担当者でしたが、これまで何ヶ月にも渡って取り組んできた搬出のためのトレーニングの成果が出ると信じ、ゲンタロウの麻酔の注射に臨みました。 ありがたいことに、ゲンタロウはいつも通り肩を柵に寄せて注射を打たせてくれました。とてもスムーズに麻酔がかかり、採血などの処置を済ませて予定通りゲンタロウを輸送用のケージに入れることができました。安全のため、麻酔から少し醒めてきている状態になってからトラックに乗せて、出発になりました。

麻酔がかかって眠り始めたゲンタロウ。警戒や緊張する
ことなく、担当者たちの目の前で眠りました。
ゲンタロウの輸送用ケージを業者の方がトラックの荷台
に固定する様子。
ゴリラ舎を出て、
多くの職員に見送られながら出発しました。

道中でゲンタロウの様子を確認した際に麻酔から完全に覚醒しているのを確認、その後も特に問題なく、走行中のカメラ映像でもゲンタロウはとても落ち着いているということでした。何度か途中でゲンタロウの様子を直接見ての確認も行いました。

途中の確認の際、麻酔から完全に覚めてきた
頃のゲンタロウ。

そして夜に無事上野動物園に到着しました。

上野動物園での搬入作業中も、輸送用ケージのそばにいた担当者に口を開けて食べ物をねだったり、ケージの中に敷いていた稲藁(当園の園内の田んぼで収穫した稲で作った稲藁でした)に残っていた米を少し食べてみたり、所々で余裕のある姿を見せていたゲンタロウ。スムーズに部屋に入って、用意されていた餌を食べ始めました。

麻酔をかけるため、前日の夕方から絶飲食だったゲンタロウ。移動中も食べ物をたくさん与えるのはあまり良くないため、少量の水を飲んだ程度だったのでお腹はペコペコだったと思います。もちろん知らない場所という緊張はあったと思いますが、翌日朝までに準備されていた餌をとっても綺麗に完食していました!

シラカシを食べるゲンタロウ。

麻酔のための絶飲食のおかげで到着時にはぺったんこになっていたお腹も2日後の夕方には大きくなってきていました。ゴリラたちは繊維質の多いものをたくさん食べるため、消化中の食べ物や、それを消化するための腸内細菌の働きによって発生するガスで大きなお腹をしています。そして絶食などをすると、溜まっていた食べ物やガスが出てあっという間に驚くほどぺったんこのお腹になります。そしてそこから元の状態に完全に戻るには少し時間がかかります。ゲンタロウも元の大きなお腹に完全に戻るまでには少し時間がかかるかもしれませんが、到着後すぐからよく食べているので、心配ないと思っています。

その後もどんどんリラックスしていく様子が見られ、きちんと夜も寝ているのが確認でき、しっかり餌も食べて、さらには到着翌日にトレーニングにも応じてくれました!時々、同じ建物内にいる、他の個体の声なども聞こえていましたが特に反応する様子もなく、落ち着いていました。 移動して数日の間でも、ゲンタロウらしい行動もたくさん見られ、きっとゲンタロウは上野でもマイペースにゲンタロウらしく生活していけると感じました。

輸送用ケージに入れていた毛布も部屋に
入れてもらい、しっかり使っていました。
開けてもらった窓からバックヤードで働く人や車などを観察中(笑)
これもいつものゲンタロウの姿です。
フィーダーに入った牧草に隠れた
落花生を、枝を使って取り出すゲンタロウ。
早速持ち前の器用さも見せていました。
担当者がいた最終日の夕方。餌を一通り食べて、ゴロゴロ
していました。京都で見ていた夕方のゲンタロウと同じ姿でした。

元々ゲンタロウは、人や物に対しての適応能力が高いと思ってはいましたが、今回、予想以上なくらいにそれを発揮してくれました。上野の担当者の方々への引き継ぎもできて、ゲンタロウの様子からも、もう大丈夫そうだと安心して帰ってくることができました。

ゴリラだけでなくどの種でも同じですが、移動後はまず検疫といって、病気にかかっていないかや寄生虫がいないかを確認するための期間があり、その間は非公開となります。ゲンタロウの公開については上野動物園からのお知らせをお待ちください。

8年半、長いようであっという間でした。ゲンタロウと過ごした時間はとても楽しかったし、いろんなことを学べました。ゲンタロウがこれからもゲンタロウらしく楽しく過ごせることを祈りながら、これからのゲンタロウの生活を楽しみにしています。

ゲンタロウ、たくさんの思い出と楽しい時間をありがとう。

ニシゴリラ担当 安井