生き物・学び・研究センターブログ
2025年11月30日(日)標本棚のラベル裏034 ワラビー(種不明)(頭骨)
動物が死亡した後は、教育普及・研究を目的として、標本を作製し保存しています。
このブログでは、現存する所蔵標本を、ラベルに載せ切れない情報と共にご紹介したいと思います。

当園では、長い歴史の中で飼育を終了した動物も多くいます。
このため、私自身が治療したことのない種の標本に出会うことも。
この標本、「ワラビー」とのみラベリングがありました。
ワラビーは双門歯目(双前歯目)カンガルー型亜目カンガルー科のうち小型のものを指す名称です。
標本一覧を参照しますと、「ダマヤブワラビー」と「パルマワラビー」の記載がありました。
両種とも体長40-60cm前後と似たサイズで、残念ながら種の同定には至りませんでした。
(もしお分かりの方がいらっしゃいましたらご教授ください。)

特徴は何といっても、双門歯目の名前の由来となった下顎門歯。
前方に突き出たこの歯は、全く違う形にカーブを描く上顎切歯と先端で咬み合います。
まるで下顎骨の一部と言わんばかりの歯ですね。
この下顎門歯、転んだりぶつかったりといった事故で破損し、そこから感染を起こすことがあるそう。
他にも歯が口腔内を傷つけたり、生え変わりのときに食べ物が詰まって化膿したりと、カンガルーの仲間は口腔のトラブルが多い動物です。
動物園業界では、これらを総称して「カンガルー病」と呼んでいます。

斜め前方から撮影した頭骨。
上顎門歯や臼歯の並びは、ウマの仲間のものに似ています。
草食動物の収斂進化を感じることができる標本でした。
土佐
