生き物・学び・研究センターブログ
2026年6月25日(木)標本棚のラベル裏049 アミメキリン(歯の構造と食べ物の話)
動物が死亡した後は、教育普及・研究を目的として、標本を作製し保存しています。
このブログでは、現存する所蔵標本を、ラベルに載せ切れない情報と共にご紹介したいと思います。

2か月半お休みさせていただいていた「標本棚のラベル裏」ですが、今回から再開させていただきます。
引き続き、よろしくお付き合いください。
再開後初回の記事ですが、過去記事の訂正のお詫びをさせていただきたいと思います。
ラベル裏014で「キリンの臼歯は高冠歯である」という記載をさせていただきましたが、こちらは「キリンの臼歯は低冠歯である」の誤りでした。
以下、経過と補足情報。
福島市立動物園の「さえずり 春 2026 Vol.27 No.1」を拝見したところ、「キリンの臼歯は短冠歯である」と記載がありました。
改めて論文等を調べたところ、キリンの臼歯は構造からみて短冠歯であることを確認しました。
これは彼らの食性に起因すると考えられます。
草食動物はブラウザー(選択的採食者)とグレイザー(牧草食者)に分類されます。
ブラウザーはウェブブラウザの「ブラウザ」と同じ語。
木の葉など、植物の中でも比較的栄養価の高い部分を選択的に食べる動物を指します。
一方のグレイザーは、地面に生えている草を刈り取って食べていくスタイル。
このグレイザーからの被食に対し、草(特にイネ科植物)は、土中からケイ素を吸収して細胞壁に蓄積し、植物体を固くして対抗してきました。
そして、固い草による歯の摩耗を補うため、グレイザーは長冠歯をもつようになったのです。
逆に言えば、キリンを含めた短冠歯のブラウザーは、歯がグレイザーほど摩耗に対して強くありません。
このこともあり、また栄養学的な観点から、アメリカでは、飼育個体に対してアルファルファ(マメ科)を主として枝葉などを混合した餌が推奨されているようです。
Clauss(2007)らは骨格標本を分析し、動物園のキリンは野生のキリンと比べて歯の摩耗が強いと述べています。
追加で与えられる牧草や、ペレットに含まれるイネ科植物が原因なのではと推定されていました。
思い込みで文章を書かないようにと自戒を込めて、記事とさせていただきます。
これからも、当連載をよろしくお願いいたします。
土佐
参考資料;
- Pérez, W., Michel, V., Jerbi. H. and Vazquez, N.(2012): Anatomy of the mouth of the Giraffe (Giraffa camelopardalis rothschildi). International Journal of Morphology, 30(1):322-329.
- Clauss, M., Franz-Odendaal, T. A., Brasch, J., Castell, J. C., and Kaiser, T. (2007): Tooth wear in captive giraffes (Giraffa camelopardalis): mesowear analysis classifies free-ranging specimens as browsers but captive ones as grazers. Journal of Zoo and Wildlife Medicine, 38(3), 433–445.
