救護センターブログブログ

2025年10月13日(月)事例紹介、5月のツバメ

野生鳥獣救護センターです。
本日は放野のお知らせです。

左の翼が下がっています。

ツバメほど到来を待ち望まれている鳥はいるだろうか、と思うほど、ツバメは身近で認知度の高い夏鳥です。民家の軒下や時には駅や店舗の照明の真上に巣を作り、子育てを行います。
独特で複雑な囀りも特徴的ですね。聞きなしでは「土食って虫食って口渋ーい」とも言われています。
「聞きなし」とは鳥や動物の鳴き声を人の言葉に置き換えて覚えやすくしたものです。ウグイスの「ホーホケキョ(法法華経)」が有名ですね。
そんな人の近くで生活するツバメ、やはり事故にあうことも少なくありません。

このツバメは道路で倒れているところを救護されました。
栄養状態は良好。飛翔ができず、左肩が下がっています。レントゲン撮影にて左烏口骨骨折が確認されました。
烏口骨は鳥の肩回りを構成している、胸部と翼の根本をつなぐ骨で飛行に不可欠な役割を担っています。骨折時の治療はピンを挿入したりギプスを装着したりはできません。安静にして骨がくっつくのを待つ、が治療となります。ツバメは渡り鳥ですので完璧に治癒しなければ渡りに支障をきたします。担当者は療養ケージの中のツバメを驚かさずに静かにソロリソロリと行動しなければなりません。餌や水等を交換する時もソロリソロリ…。広すぎないケージの中で骨がくっつくまでの約2週間、安静に過ごしてもらいました。ツバメにとっては監禁されたような感じだったかもしれません。ごめんね、これも野生に帰るためには必要な処置なのよ…と思いながら日々看護を続けました。

そして約2週間後、どうでしょう。餌も沢山食べ体力もついたのでしょう。救護室内をビュンビュンと飛び回れるようになりました。スタミナもばっちりです。これなら心配ない飛翔。野生に帰れるね、ということで放野のはこびとなりました。

LUCK! PLUCK!!

ツバメは年々生息数が減少している鳥の一種です。ツバメが減少している背景は営巣する場所が減ったこと、「里山」と呼ばれる自然環境の減少や農業の衰退により水田や耕作地が減少し、ツバメの餌となる昆虫類が減少してきていることが考えられています。人の生活に近い場所で暮らすがゆえに、人の生活様式の変化をダイレクトに受けてしまうツバメ、少しでも生息数が戻るのを願うとともに、私たちひとりひとりには何ができるだろう、と考えていく必要があるのではないでしょうか。ツバメを守ることでツバメを取り巻く自然環境そのものの保全にもつなげていきたいものです。

野生鳥獣救護センター みやがみ