救護センターブログブログ

2025年10月29日(水)事例紹介、7月のツバメ

野生鳥獣救護センターです。
本日は7月に救護されたツバメの放野のお知らせです。
車道にぐったりとうずくまっていた、との稟告でした。
空を飛ぶ鳥にとっても、車は脅威となりえます。特にツバメは地面から飛び出す昆虫を捕食しようと低い位置を飛翔することがあります。このツバメもそうだったのかもしれません。
交通事故等で命を失う危険と背中合わせであるのだなとあらためて強く考えさせられました。
運転中にふわりと舞う鳥が目の前に現れたら、避けようがない場面もあるかもしれません。ですが、もしも可能であればスピードを抑え、安全運転をお願いいたします。

ツバメは搬入時はぐったりと沈鬱状態、診察をすると右翼角の内側が内出血のような赤みを帯びていました。レントゲン撮影を行うと、明らかな骨折はありませんでしたが、右翼角は炎症が起こっているような所見でした。
何かに衝突し翼を強く打ち付けたようでした。骨折がなかったのは幸いです。炎症を抑える薬を投与し、翼と体の安静を保ち炎症が収まるのを待ちました。また、沈鬱がみられたため頭部外傷の疑いもありました。こちらに対しても安静と消炎、さらに酸素投与を行い症状改善を図りました。

搬入から数日たった頃。活力が出てきました。

搬入当初は疼痛もあったため、食事どころではなかったのでしょう。ぐったりとして微動だに動きませんでした。けがをしている時は、健康な時よりも多くのエネルギーを必要としますので、とにかく沢山食べてもらう必要があります。とはいえ無理をさせるとそれもストレスとなりますので、状態をみながら水分からはじめ、流動食、半固形物、固形物…とレベルアップしていきました。
頭部外傷が疑われる時は急変もありえます。ハラハラしながら過ごすこと数日、ツバメは少しずつ日に日に体力をつけ、自力採餌も増加していきました。翼の内出血も消退し関節も異常なし、そして救護室内を飛び回れるまでに回復しました。
そして、いざ自然へ帰る日がやってきました。

赤丸で囲んだところにきれいな飛翔姿が!しかし低い!

ツバメは段ボールケージから勢いよく飛び出しました…が、飛翔角度が低い?と一瞬不安になりましたが、その後大きく旋回し、どんどん上昇を続けました。良かった…
担当者の頭上を数回大きく旋回し、肉眼では点にしか見えないほどに高く、そして優雅に飛翔していきました。

赤丸で囲んだところにツバメがいます。中央やや右上はトンボです。

赤丸で囲んだところにツバメがいます。

左右差のない美しい飛翔姿です。担当者はツバメが見えなくなるまで見送りました。

自然界は時に厳しい面もあります。ツバメにとって日々の暮らしも渡りも命がけかもしれません。しかし、強く生き抜き次世代へ命を繋げてほしいと思います。
無事南へ渡り、また来年日本へ帰ってきてね。

LUCK!(幸運を) PLUCK!!(勇気を!)

野生鳥獣救護センター みやがみ