救護センターブログブログ

2026年1月15日(木)事例紹介。秋の風物詩、オオミズナギドリ

野生鳥獣救護センターです。
もう季節は変わってしまったのですが、少々お付き合いください。皆さんは秋というと何を思い浮かべるでしょうか?
食欲の秋、読書の秋、ハロウィン…様々だと思いますが、救護センターではなんといってもオオミズナギドリです。

オオミズナギドリは繁殖のために太平洋やインド洋、パプアニューギニア北方海域等から日本に渡ってくるといわれている鳥です。京都府では舞鶴市の北、約28キロメートルに位置する冠島が有名な繁殖地となっています。冠島は国の天然記念物に指定されていることでも有名ですね。他には伊豆諸島御蔵島や岩手県三貫島等が有名な繁殖地となっています。
そしてオオミズナギドリは京都府の鳥でもあります。少し身近に感じられるでしょうか。

頭部のごま塩模様が特徴的です

そんなオオミズナギドリ。生活の大半を海上の風に乗って生活するため、体に対して翼がとても長く独特な形状をしています。海上低くを小さく蛇行しながら向かい風で上昇、追い風で下降を繰り返すことで羽ばたかずに飛び続けることができます。海鳥が用いるエネルギーロスの少ないダイナミックソアリングと呼ばれている飛翔方法です。すごいですね。しかしその素晴らしい飛翔の代償に、地上から飛び立つときに苦労をします。オオミズナギドリが飛び立つ時は崖や木の上から飛び降りるように飛び立ち、降下していく最中に翼を振り下ろし風に乗って飛翔します。平らな地面から飛び立とうとするとその長い翼を地面に打ち付けてしまい飛び立てないのです。ですから木や崖のない地面に一旦着地してしまうとその場でうずくまり途方に暮れてしまうことも…

この個体は路上でうずくまっていました

オオミズナギドリは子育てがひと段落し、若鳥が親鳥と同じくらい大きくなった11月上旬になると、渡りを始めます。親鳥は若鳥を残して一足先に繁殖地を離れます。10日程経過してから残された若鳥たちが渡り始めます。親子そろって出発したらいいのになあと思いますが、そこはオオミズナギドリの生存戦略なのでしょう。
そしてこの渡りが若鳥にとって大きな試練となるのです。うまく気流に乗り、時には湖沼等で休憩し南へ南へ…一直線に渡りきれたら良いのですが、体力が落ちたり、うまく気流に乗れなかったり、人工の照明に惑わされたりして内陸にポツンと落下してしまう個体がでてきます。そんな個体が救護センターに搬送されてきたり、救護相談の問い合わせがきたりするのです。「渡り、という試練を乗り越えられなかった淘汰されうる個体だから、人間が手を出すべきではない」という意見もあります。それは確かに一理あります。しかし救護というのは個体をただ助けるだけではなく、環境教育の機会でもあります。何が起こってこの個体は内陸に着地してしまったのだろうか?予防できることはあるだろうか?等考えるきっかけに繋がるのです。

実は、私たちにできることはないだろうか、と考え行動に移されている地域があるのです。別種のミズナギドリではありますが、オナガミズナギドリの渡りのシーズンには人工照明をできるだけ控える運動を行っている小笠原諸島(小笠原自然文化研究所が主体となって活動)や、ミズナギドリが路上にいた時の対応方法について啓発をされている奄美大島(島の獣医師さんの活動)などが挙げられます。他にも草の根活動をされている地域もあるでしょう。
こういった私たちにできるちょっとした工夫で環境への配慮がなされれば、生物多様性の保全にもつながってゆくのではないでしょうか。

外傷なし!ホッと一安心です

2025年のシーズン中に救護センターに搬送されてきたオオミズナギドリは5例でした。幸い全ての個体において外傷はなく、軽度~中等度の衰弱でしたので、栄養補正を行ったのち、無事全羽放野のはこびとなりました。無事生息地へ辿り着くのを願いました。今年のこの試練を乗り越えた若鳥は一回り二回り逞しくなってまた日本へ繁殖のために到来することでしょう。

LUCK!(幸運を) PLUCK!!(勇気を!)

Live long and prosper!(長寿と繁栄を!)

野生鳥獣救護センター みやがみ