生き物・学び・研究センターブログ

2025年12月20日(土)標本棚のラベル裏037 ココノオビアルマジロ(頭骨)

動物が死亡した後は、教育普及・研究を目的として、標本を作製し保存しています。
このブログでは、現存する所蔵標本を、ラベルに載せ切れない情報と共にご紹介したいと思います。

以前、オオアリクイは、かつて貧歯目に分類されていたことをご紹介しました。
この旧貧歯目、とてもユニークな種から構成されており、昔図鑑のページをわくわくしながら読んでいたことを思い出します。
さて、そんな貧歯目の3つの分類群のうち、このブログで2番目にご紹介するのはアルマジロです。

クレイアニメのキャラクターのようなのっぺりした形状に、でこぼこな表面。
管状の口は、オオアリクイに似ています。

左右下顎骨は、分離した状態で保管されていました。
主として結合が緩いのか、あるいは幼若個体かは、残念ながら判断できませんでした。
貧歯目に分類されていたにもかかわらず、下顎には少なくとも8対の歯槽があります。
歯は脱落していますが、エナメル質を欠き、成長し続ける歯が生えていたはず。
雑食性で昆虫や爬虫類のほか、草の根なども食べる生き物です。

皮膚が変化した鱗甲板が、多くの個体で9枚であることからこの名があります。
アルマジロというとボールになるイメージがありますが、この種は完全な球になることはありません。

アメリカ大陸で広くみられるアルマジロで、IUCN分類でも軽度懸念(LC)となっています。
ペットとして飼育されるほか、穴を掘るため害獣として扱われることもあるとか。
そのほかにも、一卵性の四つ子を産む、低体温であるらい菌への感受性があり研究に使用されてきた、水中に潜ることができるなど、意外な特徴をたくさん持つ生き物です。

英名のArmadilloの語源は、スペイン語のArmado(「武装した、強い」)。
中国語名、及びかつて日本で使われていた漢字名は「犰狳(キュウヨ)」。
山海経に登場する妖怪の名前が当てられたものなのですが、原典には「其状如菟而鸟类喙、鸱目蛇尾、见人则眠、名犰狳、其鸣自詨、见则螽蝗为败」とのみあり、実在のアルマジロとの共通点は見当たりませんでした。

日本動物園水族館協会の飼育動物検索によれば、現在日本国内の動物園では、ココノオビアルマジロは飼育されていないようです。

土佐