救護センターブログブログ

2025年9月27日(土)事例報告、6月のカルガモ

脚が傷まないようにメッシュ状の床を設置しています。

野生鳥獣救護センターです。
本日は残念なお知らせです。
6月に搬送されてきたカルガモです。民家の窓に衝突した、との稟告でした。
到着した時にはすでにあえぎ様の呼吸をしており、大変悪い状態でした。下肢の力が抜け麻痺を起こしていました。しかし意識は清明で人の手をつついたり噛みつこうとする行動が見られました。
なんとか回復してほしい…!と脳の浮腫や炎症を抑える治療を行い、出来る限りの療養環境を整え看護にあたりました。

あえぎ様呼吸、開嘴呼吸です。

しかし残念ながらその日のうちに死亡しました。
解剖及び検査を行ったところ、鳥インフルエンザは陰性。小脳から脳幹に出血を認めました。さらに筋肉や内臓が異常な高熱を有した状態、キャプチャーミオパチーでした。衝突したのが先か、キャプチャーミオパチーを発症したのが先かまでは分かりませんでした。

救護者さんからの情報では、このカルガモにはいつも連れ添っているパートナーがいたそうです。パートナーは帰らぬ鳥となってしまったカルガモをずっと待っているのかな、それだとなんとも辛い現実だなと思うところです。残されたパートナーカルガモには新しい人生を歩んでほしいと思います。

後日転帰報告の葉書を送りましたところ、救護者さんからお手紙をいただきました。救護者さんは受傷したカルガモを搬送しないほうがよかったのか、と悩まれていました。しかし回復の希望が少しでもあるならば治療することは間違いではありません。搬送せずパートナーカルガモと添い遂げるのを見届けるのも間違いではありません。なにが正解なのだろう、と担当者も悩みました。どちらも間違いではない、今回はたまたま悪い結果となってしまった、搬送されてくる鳥の背景には鳥の家族との別離もあるのだと深く考えさせられました。担当者の中ではこれからも悩むテーマとなるかもしれません。正解はどちらだ、といったものはないかもしれませんが、考え続けていきたいと思います。

野生鳥獣救護センター みやがみ