救護センターブログブログ

2025年11月6日(木)事例紹介、8月のアオゲラ

野生鳥獣救護センターです。
本日は放野のお知らせです。

夏の暑い日にキツツキの仲間、アオゲラが搬送されてきました。

実はいわゆる「キツツキ」という名前の鳥は国内にはいません。キツツキ目キツツキ科というカテゴリーの中に、コゲラ、クマゲラ、ノグチゲラ等「~ゲラ」等とそれぞれ名前がついています(国内で確認されているキツツキ目キツツキ科ではアリスイが例外的に「~ゲラ」がつきません)。海外にはドングリキツツキ、ズアカキツツキ等、キツツキと名のつくキツツキ目キツツキ科の鳥がいます。不思議ですね。

キツツキの仲間は樹木に穴を開けて営巣したり、餌となる昆虫を獲ったりします。このように巣として利用したり餌を探したりするのに、キツツキの仲間は枯れかけ朽ちかけた樹木を選びます。キツツキの仲間が穴を開けた樹木は朽ちて地面に倒れ、土に還ります。キツツキの仲間の活動は森林の生まれ変わりを助ける役割を担っているようです。

搬送から数日たった頃。壁にもたれかかるようにして姿勢を維持しています。


そんなアオゲラ、建物のガラス窓に衝突したようです。
自力で動こうとするものの、思うように動けないようで、両足が脱力し横たわった状態でした。
レントゲン検査を行うと、明らかな骨折はないものの、腰椎に異常があるようにみえました。腰椎損傷の主な症状として足や臀部の痺れ、疼痛、脱力、麻痺があげられます。まさに、というかんじです。
アオゲラには安静に過ごしてもらうとともに、炎症を抑える薬を投与し、症状改善を図りました。

脚に力が入るようになった頃。

また同じ場所(この場合は胸部や右下の翼)に圧力がかかり続けると褥瘡を生じやすいため、床材や壁面の工夫を行いました。

人工芝の下にもクッション材を敷き除圧できる床にしています。また、どこにでもつかまれるように壁面にメッシュや樹皮を設置しています。


搬入して数日は横たわった状態でいることが多かったのですが、アオゲラは徐々に足の力を取り戻し、「THEキツツキ!」といった体勢をとれるまでになりました。壁面に設置した樹皮につかまり姿勢を維持できるまでに!

THEキツツキ!という風格が漂います。


そしてさらには飛翔するまでに回復しました。この間約3週間。目覚ましい回復です。

搬入された時やレントゲン画像では「麻痺が残ったままになるのかな、自然に返せるだろうか…」と予後に大変不安を感じていましたが、治療とアオゲラの生命力が功を奏し、野生に帰すことができました。
本当に良かった、自然界は厳しい世界だけれど、この幸運をもって強く生きてほしいと願います。

メッシュや樹皮を上手に使用していました。



LUCK!(幸運を) PLUCK!!(勇気を!)

ちなみに、救護センターの看板の横にはアオゲラの絵が掲げられています。動物園からは少し見えづらいかもしれませんが、注目してみてくださいね!

野生鳥獣救護センター みやがみ