生き物・学び・研究センターブログ

2025年6月21日(土)標本棚のラベル裏012 カバ(足/成形皮革標本)

京都市動物園は1903年の開園以来、様々な動物を飼育してきました。
動物が死亡した後は、教育普及・研究を目的として、標本を作製し保存しています。
このブログでは、現存する所蔵標本を、ラベルに載せ切れない情報と共にご紹介したいと思います。

既にカバの頭骨については御紹介しましたが、今回は足の成形皮革標本について。
カバの足の皮膚を皮革標本として処理し、生前と同じような形に成形したものです。
京都市動物園では、動物の歩き方を説明するために、このような標本をいくつか保存しています。

陸上生物の歩き方は大きく3つに分類されます。
踵を浮かせて蹄(爪)のみを接地し歩く蹄行性、踵を浮かせ指のみを接地し歩く趾行性、踵を含む足の裏全体を接地して歩く蹠行性の3種類で、各々に歩行速度や直立時の安定性などの有利不利があります。
では、カバはどの歩き方をするのでしょうか。

横から見ると、蹄だけでなく、指先を接地していました。
蹄行性とされる偶蹄類にあって、半蹄行性という例外に分類されています。

カバの皮膚は薄い表皮と分厚い真皮からなります。
皮膚を貫通させるためには強い力が必要なため、麻酔時には、大腿部中央などに皮膚に対して直角になるよう太くて長い針を打ち込みます。
ただ、カバは力が強く、足もとても速い動物。
この標本の詳細は不明ですが、危篤時に獣医師たちが麻酔処置をしたのであれば、麻酔薬の投与時にはかなり緊張したのではないでしょうか。
現在もカバを飼育しているため、今後も必要な技術ではありますが、できるだけその出番が遅くなれば(=ツグミが麻酔不要で長生きしてくれれば)と思っています。

土佐