生き物・学び・研究センターブログ
2025年12月31日(水)標本棚のラベル裏038 ワオキツネザル(頭骨)
動物が死亡した後は、教育普及・研究を目的として、標本を作製し保存しています。
このブログでは、現存する所蔵標本を、ラベルに載せ切れない情報と共にご紹介したいと思います。

霊長目は、我々ヒトを含む直鼻亜目と曲鼻亜目に分類されます。
これらの分類群の名前は、鼻孔が前や下に向いているか、あるいは湾曲しているかという違いから来ているのですが、これ以外にも様々な違いがあります。
その一つが下顎門歯の生えている向き。
曲鼻亜目では、これらの歯が前方に飛び出し櫛のように並びます。
どのくらい前向きに生えているのか、ワオキツネザルの頭骨で確認してみましょう。

ワラビーやアカカンガルーに負けず劣らずの傾き。
櫛歯と呼ばれるこれらの歯は、実際に毛づくろいのために使われます。
また、この歯の後ろには、本来の舌の根本から生えた2枚目の舌が生えています。
一説には、毛づくろいした後などに櫛歯を掃除するための舌ではないかとのこと。

また、大きな眼球を支えるために、ほかの霊長目と同じく目の回りの骨(眼窩輪)が発達しています。
ただ、この眼球の後ろ側の骨(眼窩後壁)は発達しておらず、前方から見ると後頭部が見えます。
以前ご紹介したニシゴリラの正面からの写真と比べると、違いが分かりやすいのではないでしょうか。
似ているようでバリエーション豊かなサルの頭骨、観察すると楽しいよというお話でした。
当園の個体登録上最初に登録されているキツネザルは、1925年に受入れの「狐猿001」。
その後飼育を行っていませんでしたが、1970年にワオキツネザルの飼育を再開しました。
血統的な連続性はないのですが、その後現在までこの種の飼育を継続しています。
土佐
