生き物・学び・研究センターブログ

2025年7月5日(土)標本棚のラベル裏014(011+001+002) 歯:ビーバーとキリンとブタ

京都市動物園は1903年の開園以来、様々な動物を飼育してきました。
動物が死亡した後は、教育普及・研究を目的として、標本を作製し保存しています。
このブログでは、現存する所蔵標本を、ラベルに載せ切れない情報と共にご紹介したいと思います。

アメリカビーバーの歯を上から見たいというご意見をいただいたので、011で御紹介した頭骨の下顎を分離し、上顎側から撮影しました。
アメリカビーバーの歯のうち切歯は、常生歯(開放歯)と呼ばれる常に伸び続ける歯。
特にげっ歯類の切歯は鼻先側がエナメル質、舌側が象牙質で構成されています。
このため、食物などを齧ることで象牙質が先に削れ、常に歯を鋭利な状態に保つことができます。

なお、げっ歯類には、切歯のみ常生歯の種と、全ての歯が常生歯の種がいます。
ウサギなどは後者に含まれるため、臼歯が異常に伸びて舌や頬を傷つけてしまうことがあります。

こちらは001のキリンの歯。
草食動物では一般的な、長冠歯(高冠歯)の臼歯を持ちます。
これは、萌出後も長期間エナメル質の形成が継続する歯のことで、結果として長いエナメル質を持つことになります。
草食動物は硬い草を磨り潰すために歯の摩耗が激しく、これに対抗できるように、このように歯を進化させたのだと思われます。

最後に、002ブタの頭骨。
犬歯が口腔外に飛び出している様子が特徴的です。
犬歯はげっ歯類の切歯と同じく常生歯で、上下の歯が擦り合うことで鋭利な構造を保ちます。
臼歯はヒトと同じく短冠歯(低冠歯)で、萌出の前にエナメル質の形成が終わります。

同じ構成成分を持ちながら、構造が異なる3種の歯をご紹介しました。
このような違いを知ることができるのも、動物園の標本室ならではでしょうか。

土佐